目上に対して使うのは「寸志」?「御礼」?
ビジネスシーンのみならず、普段の生活の中でもよく用いられる「寸志」と「御礼」という言葉。
ここでは、「寸志」と「御礼」という言葉には、いったいどのような意味や使い方があるのかを考えてみたいと思います。
「寸志」の読み方と意味とは?
まずは、「寸志」という言葉の読み方と意味の確認から。
「寸志」は”すんし”と読みます。
「寸」とは、”わずかな”や”少しの”といった意味があり、昔は長さの単位(一寸=約3.03㎝)としても使われていました(『一寸法師』という昔話もありますね)。そして、「志」は”気持ち”のことになります。
すなわち「寸志」とは、”わずかな(少しの)気持ち”を表す言葉なのです。
「寸志」=”わずかな(少しの)気持ち”
現代において「寸志」は、少額のボーナスやちょっとしたお金、心ばかりの品など、相手に金品を渡す際に、のし袋の表書きに自分自身を《へりくだって》書く言葉として使用されます。
また、一般的に「寸志」は目上の者が目下の者に対して用いる言葉であるとされています(※諸説があります)。
- ”わずかな(少しの)気持ち”
※相手に金品を渡す際に、のし袋の表書きに自分自身を《へりくだって》書く言葉
※一般的に目上の者が目下の者に対して用いる言葉であるとされる(諸説がある)
「寸志」はどのようなシチュエーションで用いられる?
この「寸志」という言葉は、どのようなシチュエーションで用いられるのでしょうか?
具体的な例で考えてみましょう。
- 中小企業において、ボーナスとまでは言えないが社員に少額のお金を渡す際
- 社内で飲み会が開催され、上役が「自分は行けないけど、みんなでこれを使ってよ」とお金を渡す際
- 社員旅行で、社長が旅費以外で社員にお小遣いを渡す際
- 町内の子供会の納涼イベントにお金を出す際
あくまで一例ですが、以上のようなケースにおいて、のし袋の表書きに「寸志」という言葉が使用されます。
目上に対しては「寸志」ではなく「御礼」を用いる
と、ここまで「寸志」について見てきましたが、「寸志」は、一般的には目上の者が目下の者に対して用いる言葉だとされています(※諸説があります)。
では、目下の者が目上の者に対して金品を渡す際には、どのような言葉を用いればよいのでしょうか。
その際には、「寸志」と同様の意味を持ち、目下の者が目上の者に対して使うことができる「御礼」や「松の葉」などといった言葉を用います。
- 目下に対して ⇒ 「寸志」「薄志」「心ばかり」など
- 目上に対して ⇒ 「御礼」「松の葉」など
(※それぞれに諸説がある)
もらった「寸志」は、「ご厚志(ご芳志)」に言い換える
また、注意しなければならないのは、「寸志」は、あくまで自分自身を《へりくだって》書く言葉であるという点(※《へりくだる》とは自分を下げること)。
ですから「寸志」をもらった場合、もらった側は「寸志」を別の言葉に言い換えなければなりません。
そんなときに使えるのが「ご厚志(ご芳志)」という言葉です。
「ご厚志(ご芳志)」とは?
「ご厚志」の読み方は”(ご)こうし”。
「厚志」とは、「厚い志(こころざし)」のこと。つまり「ご厚志」とは、基本的に”(相手の)深い思いやり”という意味を持つ言葉です。
一般的には、”特に相手に金品をもらったときに、その金品を指す言葉”となります。
- ”(相手の)深い思いやり”
- ”特に相手に金品をもらったときに、その金品を指す言葉”
同様の意味を持つ言葉には「ご芳志」(読み方:”(ご)ほうし”)があります。
「寸志」をもらった側は、「山田部長から『ご厚志(ご芳志)』をいただきました」といったように、「寸志」をこれらの言葉に言い換えます。
また「ご厚志」や「ご芳志」以外にも、シチュエーションによっては「ご寄附」や「お志(こころざし)」などといった言葉を用いることができます。
いずれにせよ、「寸志」と「御礼」という言葉は普段の生活の中でもよく用いられる言葉なので、社会人の常識として意味を知っておきたいところです。
以上、「寸志」と「御礼」の意味と使い方についての説明でした。みなさんの参考になれば幸いです。
- 寸
(Wikipedia) - 「寸志」の使い方についてです。
(Yahoo! 知恵袋) - 目下の者が「寸志」を出す場合、袋には何と書けばいいのでしょうか?
(Yahoo! 知恵袋)
※本記事は2017年10月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。