「A社は創業者である社長による『ワンマン』経営だと揶揄されるが、社長が裸一貫から起業し一部上場企業にまで育てあげた点は見逃せない」......。
このようにビジネス系の記事やビジネスシーンで見聞きする機会も多い「ワンマン」という言葉。
いったいどのような意味があるのか、ここでは考えてみたいと思います。
本来は”一人”を意味する「ワンマン」
「ワンマン」とは英語の one man のこと。
すなわち、本来は”一人(で)”を意味する言葉です。
- ”一人(で)”
「ワンマンショー」「ワンマンバス」「ワンマン運転」などと言った言葉は、”一人(で)”をイメージするとわかりやすくなります。
- 「ワンマンショー」
=”一人で行うショーのこと” - 「ワンマンバス」
=”運転手一人だけで運行するバスのこと” - 「ワンマン運転」
=”鉄道・バスなどの交通機関が運転手一人だけで運行すること”
ちなみに昔のバスは、鉄道のように運転手に加えて(乗車券を販売するための)車掌も同乗していたのだとか。
現在、地方のバスの車体に「ワンマンバス」と表記されているのは、その名残りかもしれません。
ビジネスシーンでの「ワンマン」はネガティブなイメージを持つ
ただし、ビジネスシーンで用いられる「ワンマン」という言葉は、ネガティブなイメージを伴って使われている点に注意したいところ。
ビジネスシーンで用いられる「ワンマン」は、”独裁的な一人の人物が組織を率いる様子”や、”指導者の独断によって意思決定がなされる様子”を意味しているのです。
- ”独裁的な一人の人物が組織を率いる様子”
- ”指導者の独断によって意思決定がなされる様子”
例えば次のように用いられます。
- 「ワンマン社長」
=”独裁的な社長のこと” - 「ワンマン経営」
=”独裁的な人物により行われている経営のこと”
良く言えば「強力なリーダーシップ」悪く言えば「ワンマン」!?
「ワンマン社長」や「ワンマン経営」といった言葉は、特に創業者が一代で築き上げ、創業者が先頭に立って経営を進めている会社に対して、批判的な文脈で用いられます。
良く言えば「強力なリーダーシップ」や「トップダウン」なのですが、仮に創業者(あるいはリーダーシップを発揮する人物)が先頭に立って経営を進めている会社で不祥事などが起きた際には、「ワンマン社長」や「ワンマン経営」などと批判の対象となるケースがあるわけです。
つまり「強力なリーダーシップ」や「トップダウン」と「ワンマン社長」「ワンマン経営」は、表裏一体の関係にある言葉なのです。
いずれにせよ、「ワンマン」という言葉は常にネガティブなイメージを伴うため、相手をほめたい際には用いることができないので注意しましょう。
「ワンマン」の使い方(文例)
具体的な文例を見てみましょう。
- 社長の「ワンマン」ぶりには、社員はほとほと困っている。
- A社は創業者である社長による「ワンマン」経営だと揶揄されるが、社長が裸一貫から起業し一部上場企業にまで育てあげた点は見逃せない。
- 戦後の混乱期に強烈なリーダーシップを発揮した吉田茂首相は、その一方で「ワンマン」宰相とも呼ばれた。
このように用いられます。
「ワンマン」の同義語・類義語
ビジネスシーンで用いられる「ワンマン」に似た言葉には、「独裁(者)」や「独断的な人物」、「強力(強烈)なリーダーシップ」、「トップダウン」、「天皇」などといった言葉があります。
- 「独裁(者)」
- 「独断的な人物」
- 「強力(強烈)なリーダーシップ」
- 「トップダウン」
- 「天皇」
繰り返しますが、「ワンマン」という言葉はビジネスシーンでもよく用いられる言葉であるものの、常にネガティブな文脈で使用されるという点には注意したいところ。
相手をほめたい際には「強力なリーダーシップ」と言い換えましょう。
くれぐれも取引先の社長に「社長の見事な『ワンマン』ぶりに敬服します」などと言わないようにしてくださいね!
以上、「ワンマン」の意味と使い方についての説明でした。参考になれば幸いです。
※本記事は2016年12月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。