「この問題の最大の『懸案』事項は、財源の確保である」「長年の『懸案』事項であった問題が無事に解決した」......。
このようにニュース記事や公的機関の発表する文章、公人のスピーチなどで見聞きする機会が多い「懸案」という言葉。
「懸案」という言葉には、いったいどのような意味や使い方があるのでしょうか?
「懸案」の読み方と意味とは?
まずは「懸案」という言葉の読み方と意味の確認から。
「懸案」の読み方は"けんあん"。
「懸」と「案」の字には、それぞれ"ひっかかる"、"内容・意見・計画"という意味があります。
簡単に言うと、「懸」とは"以前から問題となっている"、「案」とは"事柄"のことです。
- 「懸」 = "ひっかかること" ⇒ "以前から問題となっている"
- 「案」 = "内容・意見・計画" ⇒ "事柄"
つまり「懸案」とは、"以前から問題となっている(未解決の)事柄"を意味します。
- "以前から問題となっている(未解決の)事柄"
ちなみに「懸案」に似た言葉に、「懸念(読み方:"けねん")」があります。この言葉も「懸」が持つ"以前から問題となっている"の字義を踏まえると、"以前から問題となっている心配"という意味になることがわかるでしょう。
「懸案」は代表的な『お役所言葉』であり、公的機関の発表する文章や公人のスピーチ、ニュース記事など、ややお堅いシチュエーションで好んで使われる言葉のひとつです。
「懸案」と「懸案事項」の意味の違いとは?
また、「懸案」を用いた言葉には「懸案事項」というものがあります。
「懸案」も「懸案事項」も、ほぼ同じ意味で用いられているものの、「懸案」を用いた場合には全体的な問題に対して、一方の「懸案事項」を用いた場合には、より個別具体的な問題について言及しているケースが少なくない印象を受けます。
ただし、そこまで厳密に二つの言葉の使い分けがなされているわけではないようです。
「懸案」の基本的な使い方
続いて、「懸案」の基本的な使い方(基本パターン)を見てみましょう。
基本的には「懸案である」や「懸案となっている」、そして先ほど挙げた「懸案事項」などの表現で用いられます。
- 懸案である
- 懸案となっている
- 懸案事項
「懸案」という言葉の前には、「長年の」「最大の」「かねてより」「○年越しの」などといった言葉がつきます。
「懸案」の具体的な文例
「懸案」を用いた具体的な文例についても見てみましょう。
- 市役所の移転・新設については、10年越しの「懸案」となっている。
- この問題の最大の「懸案」事項は、財源の確保である。
- 長年の「懸案」事項であった問題が無事に解決した。
- 官房長官は会見で「外相会談では二国間の『懸案』について、しかるべく取り上げていく」と述べた。
- 国際関係には様々な「懸案」があるが、政治的英知を持って乗り越え協力を進めることが重要だ。
- アフリカ進出を狙う企業にとっては、テロや内戦といった治安リスクが最大の「懸案」となっている。
このように用いられます。
「懸案」の同義語・類義語
「懸案」の同義語・類義語にはどのような言葉があるでしょうか?
「懸案」に似た言葉には「懸念」や「(長年)未解決の問題」、「(長年)解決していない問題」、「積年の課題」などといった言葉があります。
- 「懸念」
- 「(長年)未解決の問題」
- 「(長年)解決していない問題」
- 「積年の課題」
いずれにせよ、「懸案」という言葉は社会人の常識として意味を知っておきたい言葉のひとつです。この機会に意味を知っておいても損はないでしょう。
以上、「懸案」の意味と使い方についての説明でした。参考になれば幸いです。
※本記事は2016年8月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。
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