みなさんは、巨大ショッピングモールでついつい衝動買いをしてしまったという経験はありませんか?
それは、もしかしたら巨大ショッピングモール側の仕掛けにハマってしまったのかもしれません。
ここでは、消費者がつい衝動買いをする理由を解き明かす「グルーエン・トランスファー」と「電通戦略十訓」という二つ言葉を紹介します。
この二つ言葉のキーワードは「混乱」です。
巨大ショッピングモールでつい衝動買いしてしまう理由
現在、全国各地に存在する巨大ショッピングモール。行くだけでも楽しいものですね。
巨大ショッピングモールには、様々なテナントが入居し数多くの商品が販売されています。さらには不思議と気分が高揚しやすいもの。そのため、つい本来の目的以外の商品を衝動買いしてしまった経験がある人も多いでしょう。
実は、巨大ショッピングモールには消費者に衝動買いをさせる仕掛けが数多く存在しているのです。
例えば「グルーエン・トランスファー」(Gruen transfer 、「グルーエン効果」「グルーエン転移」とも)を活用した店舗作り。みなさんは、この言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「グルーエン・トランスファー」とは?
「グルーエン・トランスファー」とは、"消費者は「混乱」をすると、自律性を失い衝動買いをしやすくなる"現象のことです。
巨大ショッピングモールなどの"建物内が「混乱」に満ちているほど、消費者の衝動買いが増える"とも解釈されています。
- "消費者は「混乱」をすると、自律性を失い衝動買いをしやすくなる"
- "建物内が「混乱」に満ちているほど、消費者の衝動買いが増える"
この「グルーエン・トランスファー」は、欧米で巨大ショッピングセンターの設計を多数行なった、オーストリア出身の建築家、ビクター・グルーエン(Victor Gruen 、1903年-1980年)の名前に由来する言葉です(ちなみにグルーエン自身は、このような作為的な購買誘導を否定しています)。
消費者に衝動買いをさせる「混乱」とは?
消費者に思わず衝動買いをさせてしまう「混乱」には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
消費者を「混乱」させるには、特に「消費者に対し多くの情報を与えること」が有効だとされています。
例えば視覚的な情報。中心部に吹き抜けを作ることで他の階の店舗の看板を見せることや、店舗内のレイアウトや導線をわざと複雑にする(そして目的以外の商品の情報に触れさせる)こと、「セール中」「限定品」の札や商品説明のポップを多用することは、典型的な「消費者に対し多くの情報を与えること」になるでしょう。
さらに聴覚的な情報も重要です。店舗内にアップテンポの曲をかけ消費者の気分を高揚させることも「消費者に対し多くの情報を与えること」のひとつの例になります。
このように「消費者に対し多くの情報を与えること」で、消費者は「混乱」をし、思わず衝動買いをしてしまうのです。
- 中心部に吹き抜けを作ることで他の階の店舗の看板を見せる
- 店舗内のレイアウトや導線をわざと複雑にする
- 「セール中」「限定品」をはじめとするポップを多用する
- 店舗内にアップテンポの曲をかける
巨大ショッピングモール以外での「グルーエン・トランスファー」の事例
「グルーエン・トランスファー」を活用した店舗作りは、巨大ショッピングモール以外にもスーパーマーケットやコンビニエンスストア、各種小売店などでも見ることができます。
特に、『ドン・キホーテ』や『ヴィレッジヴァンガード』などの店舗作りは、「グルーエン・トランスファー」の事例としてわかりやすいかもしれません。
次の一文は、Wikipedia から引用した『ドン・キホーテ』の店舗の特長です。
(『ドン・キホーテ』の)店舗内は「圧縮陳列」と呼ばれる陳列方法を採用。隙間なく商品を並べて店内は半ば迷路のようになっており、買い物客に目当てのものを探し出させる宝探し的な要素をもたせている。
このような陳列方法が消費者を「混乱」をさせ、消費者は思わず衝動買いをしてしまうのです。
「グルーエン・トランスファー」と「電通戦略十訓」
消費者に「混乱」を与えることで、衝動買いが引き起こされるということは、日本でも古くから知られていました。
例えば、大手広告代理店・電通が1970年代に提唱した「電通戦略十訓」。
「電通戦略十訓」は、消費者に衝動買い、すなわち浪費をさせる方法論です (「電通戦略十訓」はヴァンス・パッカード(Vance Packard)が著した『浪費をつくり出す人々』(1960年)を参考にしているとされます)。
どのようなものか実際に見てみましょう。
- もっと使わせろ
・捨てさせろ
・無駄使いさせろ
・季節を忘れさせろ
・贈り物をさせろ
・組み合わせで買わせろ
・きっかけを投じろ
・流行遅れにさせろ
・気安く買わせろ
・混乱をつくり出せ
最後の最後に「混乱」という言葉が出てきますね。
このように、消費者を「混乱」をさせることは、消費者の衝動買いを生み出すわけです。
以上、「グルーエン・トランスファー」と「電通戦略十訓」についての説明でした。参考になれば幸いです。
みなさんの身の周りには、「混乱」は生み出されていませんか?
- ビクター・グルーエン
(Wikipedia) - Gruen transfer
(Wikipedia) - ドン・キホーテ(企業)
(Wikipedia) - ヴィレッジヴァンガード(書籍・雑貨店)
(Wikipedia)
※本記事は2016年8月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。
▶合コン好きな女性の婚期が遅れる理由!?コロンビア大学教授が発見した「ジャムの法則」とは?
▶新しい消費者層の概念…「マイルドヤンキー」の意味とは?
▶朝礼ネタに使える!「つもり違い十訓」「福澤心訓」「心戒十訓」とは?