「文章が上手な作家の定義はとても曖昧であり、話者の『恣意的』な判断によるところが大きい」「今回の分類は、あくまでも調査のための『恣意的』な分類であり、今後の状況によっては変更される可能性もある」......。
このように用いられる「恣意的」という言葉。
なんだか難しい言葉のようですが、いったいどのような意味や使い方があるのでしょうか?
「恣意」の読み方と意味とは?
まずは先に「恣意」という言葉の読み方と意味の確認から。
「恣意」の読み方は”しい”。
「恣」の字が少し難しいのですが、この漢字の字義は”勝手気ままな様子”を意味します。
そして、この「恣」の字を含む「恣意」という言葉は、”勝手気ままな考え(=意見)”や”思いついたままの考え(=意見)”という意味を持ちます。
- ”勝手気ままな考え(=意見)”
- ”思いついたままの考え(=意見)”
「恣意的」の意味とは?
というわけで「恣意的」の意味は、”勝手気ままな考え(=意見)であること”や、”思いついたままの考え(=意見)であること”になるわけです。
例えば、学生が何に対しても「超カワイイ♡」や「超イケてる」などと発言することや、ビジネスパーソンが飲み屋で「とりあえずビール!」と言うことは、ある意味「恣意的」な発言だと言えるかもしれません。
また「恣意的」の意味には、合理的ではない、あるいは客観的ではない”(自分本位であったり私利私欲に基づくなど)自己中心的な考え(=意見)であること”を指すケースもあります。
「政治家A氏の発言は『恣意的』なものだ」と言えば、”勝手気ままな考え(=意見)であること”以外に、”(自分本位であったり私利私欲に基づくなど)自己中心的な考え(=意見)である”点が意味として強調されていることが少なくありません。
- ”勝手気ままな考え(=意見)であること”、”思いついたままの考え(=意見)であること”
- ”(自分本位であったり私利私欲に基づくなど)自己中心的な考え(=意見)であること”
ちなみに「恣意的」という言葉は、一般的な文章ではあまり用いられず、学術論文や評論文などといった硬い文章で多く使用される言葉です。
入試問題における「恣意的」
余談ですが大学入試における現代文の出題。
「恣意的」という言葉は大学入試の現代文で、よく問題となる言葉です。
「『恣意的』の同義語を選べ」という問題では、「自己中心的」や「主観的」、あるいは「意図的」などといった言葉が正解となります。
近年、ネット上では「恣意的」という言葉に「意図的」という意味はない、誤用であるという説があふれているそうですが、もちろん、そういったことはありません。
「恣意的」を用いた具体的な文例
実際に「恣意的」という言葉を用いた具体的な文例を見てみましょう。
- 解散権は、首相によって「恣意的」に行使されてきた悪しき政治慣行だとの指摘も存在する。
- 大企業が「恣意的」に納入価格を引き下げたら、下請け会社の事業計画も狂ってしまう。
- 文章が上手な作家の定義はとても曖昧であり、話者の「恣意的」な判断によるところが大きい。
(→「主観的」) - そのような悪意を持った「恣意的」なレッテル貼りはやめていただきたい。
(→「意図的」) - 報道によると、今回A社が摘発されたのは、当局により「恣意的」にターゲットにされたからだという意見が多い。
(→「意図的」) - 今回の分類は、あくまでも調査のための「恣意的」な分類であり、今後の状況によっては変更される可能性もある。
(→「とりあえずの」)
このように用いられます。
「恣意的」という言葉が出てきた場合、基本的には”勝手気ままな考え(=意見)であること”、あるいは”(自分本位であったり私利私欲に基づくなど)自己中心的な考え(=意見)であること”と解釈しておけば、まず意味が通じますが、場合によっては上記の文例のように「主観的」、「意図的」、「とりあえずの」などと解釈したほうがわかりやすいケースも多くあります。
いずれにせよ「恣意的」は、あまり聞きなれない人も多い言葉なので、ビジネスシーンにおいては状況に応じた表現に言い換えたい言葉のひとつです。
以上、「恣意的」の意味と使い方についての説明でした。参考になれば幸いです。
※本記事は2016年12月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。
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