一般的に倒産と言えば、商品やサービスの販売不振による売上の減少が原因となり起きるものですが、近年、小売業や外食産業、そしてIT業界のスタートアップベンチャーでは人件費を原因とした「人件費倒産」が増えているのだとか。

「人件費倒産」とはいったいどのようなものでしょうか?

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■ 「人件費倒産」とは?

「人件費倒産」とは文字通り社員や従業員の人件費が原因となって起きる倒産のことです。「人件費倒産」には、大きく分けて二種類のケースがあります。

まず一つ目は、賃金水準の高騰により、商品やサービスの開発や販売などに必要な人材を集められず、企業経営の継続を断念せざるを得ないケース。人手不足による小売店や飲食店の閉店や事業停止なども、このケースに当てはまります。

二つ目は、商品やサービスの開発に必要な社員の人件費が、企業に固定費用負担として重くのしかかり経営を圧迫するケース。最近ではIT業界のスタートアップベンチャーでよく見る事例です。

《「人件費倒産」の二種類のケース》

① 賃金水準の高騰により人材を集められない → 倒産

② 社員の人件費が固定費用負担に → 倒産


■ 賃金水準の高騰に対し企業は商品やサービスの価格に転嫁し対応する

最近では、労働集約型の業界である小売業や外食産業における人手不足が深刻化しているとの報道が増えています。

ある業界における人手不足の深刻化は、業界全体の賃金水準の高騰につながります。そして賃金水準が高騰し人件費が増加した場合には、一般的に企業は商品やサービスの価格に転嫁し対応します。

特定の顧客を持っていたり独自の商品やサービスを持っている企業の場合、商品やサービスへの価格への人件費の転嫁はスムースに移行する可能性は高いでしょう。


■ 人手不足→賃金水準維持→人材を集められない

しかし商品やサービスの低価格をウリにするといった、価格に転嫁できないビジネスモデルを持つ企業では、賃金水準の高騰にすぐに対応できず以前の賃金水準を維持する傾向が強いため、人材を集められず慢性的な人手不足が続くことが多いようです。

慢性的な人手不足が続いた場合、既存の社員や従業員の仕事量負担が増えるため、社員や従業員の士気の低下や離職率の増加につながります。さらには商品やサービスの品質の低下を引き起こし、企業の売上を減らすこともあるでしょう。

このように人手不足による賃金水準の高騰に対し、企業が賃金水準を維持するという選択した場合には、人材を集められず事業の継続が困難になるケース、慢性的な人手不足が引き金となって売上が減少し倒産につながるケース、いずれも起きる可能性があります。


■ IT業界のスタートアップベンチャーで増加している「人件費倒産」

一方、賃金水準の高騰に対し人件費を増加させ対応するものの、人件費の増加に見合った売上が見込めず、人件費が固定費用として重い負担となり倒産に至る企業もあります。特に開発費用が多額となるIT業界のスタートアップベンチャーで、最近よく見る事例です。

IT業界のスタートアップベンチャーの多くは、ベンチャーキャピタルなどが株主となって数億単位の出資を受けサービスを開発します。開発費用の多くはエンジニアの高額な人件費となります。

ほとんどの企業はサービスをローンチするまで(時には数年にも及ぶこともあります)売上はありません。またサービスをローンチできたとしても、世間にサービスが受け入れられなかったり、想定していた売上が上がらないというケースも多くあります。気がついたら数億単位であった資本を食いつぶしていたということになるのです。

そしてベンチャーキャピタルなど株主から追加出資が見込めず、また事業売却を検討しても買い手がいない場合、結果的に倒産を選択することになります。




■ 「人件費倒産」を防ぐためには?

「人件費倒産」を防ぐためにはどうすればよいでしょう?

「人件費倒産」を防ぐためには、自社のビジネスモデルの見直しが急務となります。飲食店や小売店であれば、賃金水準の高騰にも耐えられるよう高付加価値商品やサービスを開発する、ストック型の収益モデルを構築するといった対応を取ることができます。

IT業界のスタートアップベンチャーなどの場合には、サービスのローンチ以前の売上が上がらない期間でも、自社のエンジニアを活用し他社の下請けをすることで売上を上げることはできます。

また業種に関わらず機械化や外注を積極的に活用することで、固定費用となる人件費の圧縮を可能にするでしょう。

いずれにせよ「人件費倒産」を防ぐためには、経営者の迅速かつ適切な経営判断が必要になってくることは確かなようです。

《「人件費倒産」について深く知る参考リンク》

企業倒産件数の減少に潜む、人件費上昇による「隠れ倒産」とは!?
(ZUU online)

いつも高収益な業界の仕組み IT、外資コンサル、美容・エステ、スマホ……
(PRESIDENT 2015年3月16日号)

ヤマト運輸 全上場企業で従業員数8位、売上高108位の意味
(NEWSポストセブン)


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キーワード: ビジネスネタ